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実録!少年院・少年刑務所 [本]

実録!少年院・少年刑務所

実録!少年院・少年刑務所

  • 作者: 坂本 敏夫
  • 出版社/メーカー: 二見書房
  • 発売日: 2010/01/18
  • メディア: 単行本

 正直に言って、期待外れだった。
 少年院や少年刑務所での処遇が詳細に描かれていることを期待したのだが、何人かのモデルケースを使ってテレビドラマ(主人公など主な登場人物はヤンキー)の粗筋のような描写があるだけ。教科書に載っているような解説はあるのだが具体例が伴わないので、ネットで検索すれば分かりそうな内容。

 誰に向けて書いた本かも分からない。後半は少年院や少年刑務所に入る少年のためのマニュアルのようになっている。全国52の少年院を1ページずつ紹介している章は、まるで進学する大学を選ぶ際の大学紹介のような感じで、不良少年たちに「安心して少年院に来い」と言っているよう。これを見て、少年の両親が「どの少年院に入れようか」などと考えそう。実際は両親が決めることはできないが…。
 序章は被害者信条に沿った「厳罰化」を求めているようにも読めるが、全体として少年たちに寄り添っているので芯が見えない。
 第1章は家庭裁判所批判。エリートが嫌いなのかなと思わせる描写。もちろん、著者の言うとおり、少年院で働いている現場の人たちの意見を聞くのは大事だと思うが。

 「信賞必罰」という言葉が何回か出てくる。著者の求めている態度で、褒める時はちゃんと褒めて、叱る時はちゃんと叱りましょうよという思いは頷けるが、少年院で他の少年が一人の少年を取り囲んで、一人が膝蹴りをするまで黙って見ていたり、少年刑務所で受刑者に鉄拳を食らわせる人がいたりで、それらを感動的に描くことで賞賛しているようで、著者は体罰肯定派なのかなと思った。
 全体として親や教師など力の強い者が「信賞必罰」で少年たちを手懐ける社会を望んでいるような感じ。40年以上前のテレビドラマ(学園もの)の感動的なシーンをイメージした。私も見て感動していたタイプなので分かる気がするが、頷くことはできない。

 テレビドラマのような事例を見ながら感じたのは、少年院のメリットは「悪い環境から少年たちを離せること」ではないかと思った。規則正しい生活、まともな食事、投げ出さずに勉強を教えてくれる教師がいる環境。少年院に来るまでは、不規則な生活で、まともな食事もなく、勉強にもついて行けず、悪い友人が悪いことに誘ったり…。そんな環境から一時的に離して、まともな生活習慣を身に付けられることがメリットがもしれない。自由が大幅に制限され、上限関係がはっきりしている絶対服従の状態ではあるが…。

 お勧めしたくないが、興味のある人は読んでも良いかもしれない。少しは少年院のことが分かるかもしれない。ただ、初版が2010年2月15日で制度関連の情報が古い。あれからいろいろと変わったような気がする。

 約260ページ。全部読むのに3時間弱。


タグ:坂本敏夫

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高橋留美子劇場 第1集~第3集 [本]

高橋留美子劇場 (1) (ビッグコミックス)

高橋留美子劇場 (1) (ビッグコミックス)

  • 作者: 高橋 留美子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2003/06/30
  • メディア: コミック
高橋留美子劇場 (2) (ビッグコミックス)

高橋留美子劇場 (2) (ビッグコミックス)

  • 作者: 高橋 留美子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2003/06/30
  • メディア: コミック
高橋留美子劇場 3 (ビッグコミックス)

高橋留美子劇場 3 (ビッグコミックス)

  • 作者: 高橋 留美子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2009/10/30
  • メディア: コミック

 現在、「高橋留美子劇場」は第4集まで発売されているらしい。私は何カ月も前に買っておいた第3集までを読んだ。

 「高橋留美子劇場」はテレビ東京のアニメで見たのが一番最初だと思う。笑えて、泣けて、オープニングテーマ「つづれおり」もエンディングテーマ「さよなら」も良くて、何年か後にDVD-BOXも買って見た。DVD-BOXには特典として「日帰りの夢」のコミックが付いていた。この「日帰りの夢」は「高橋留美子劇場 第3集」に掲載されている。

 「高橋留美子劇場」の各コミックに掲載されている作品は次の通りである。

 第1集は「Pの悲劇」「浪漫の商人」「ポイの家」「鉢の中」「百年の恋」「Lサイズの幸福(しあわせ)」。
 第2集は「専務の犬」「迷走家族F(ファイアー)」「君がいるだけで」「茶の間のラブソング」「おやじローティーン」「お礼にかえて」。
 第3集は「日帰りの夢」「おやじグラフィティ」「義理のバカンス」「ヘルプ」「赤い花束」「パーマネント・ラブ」。
 第4集は「運命の鳥」「ポジティブ・クッキング」「事件の現場」「しあわせリスト」「年甲斐もなく」「隣家の悩み」。
 DVD-BOXには第1集と第2集に掲載されている作品と第3集の「日帰りの夢」が載っている。

 第1集と第2集の作品はアニメで見ていてストーリーを知っていたのだけど、楽しめた。感動もできた。ペンによる顔の輪郭が理由かもしれないが、漫画の方がアニメよりも柔らかく感じた。高橋留美子さんの絵は好きである。
 第3集は「日帰りの夢」以外は知らない作品で、やっぱり面白くて、感動的に終わるかと思ったら笑えるオチがあったりして、やっぱり高橋留美子さんの作るストーリーは面白い。一部、カラーで見たら綺麗だろうなぁと思える見開きのページもあった。白黒でも想像力で補って絵を見た。
 第4集はまだ読んでない。発売されたばかりらしく買いたいと思った。
 第1集と第2集の分はアニメ化されて、第3集と第4集と未収録作品でアニメ化するのに十分な作品が揃ったと思うから、アニメ化を期待している。

 それぞれ、約200ページ。それぞれ、約1時間で読める。

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タグ:高橋留美子

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新凍りついた瞳 [本]

新凍りついた瞳 (集英社文庫 さ 22-3)

新凍りついた瞳 (集英社文庫 さ 22-3)

  • 作者: ささや ななえ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: 文庫

 文庫版の初版は2012年10月23日で、文庫版用のあとがきとしてささやななえさんの「あとがきにかえて」と椎名篤子さんの「傷ついた子どもの成長のために」が載っている。そして、文庫版になる前のコミックの椎名篤子さんの「あとがき」もある。それが2003年9月である。その「あとがき」に次のように書いてある。

 続編である本書「新 凍りついた瞳」では、他の作品に比べて、法律や子ども虐待に関係する事象の説明が多い。実はこれには理由がある。この漫画が「児童虐待の防止に関する法律」の法律改正に向けて、いくつかの願いを込めて制作されたものだからである。

 載っている作品の発出を見ると2002年から2003年。そして2004年に「児童虐待の防止等に関する法律」は改正された。関連する法律も改正され、文庫本には枠外に2004年に児童福祉法が改正されたことが記載されている。すなわち、文庫本に描かれているのはその前の問題点である。残念ながら、法改正後も児童虐待で亡くなる子が後を絶たないが…。

 最初の作品「凍りついた瞳」の原作は椎名篤子さんの「親になるほど難しいことはない」で、これを読んだささやななえさんが『心臓のドキドキが止まらなく』なり『「これを描けってこと?」と気づいた』そうだ(「あとがきにかえて」より)。私は原作本は読んでないが「凍りついた瞳」を読んだ時に心臓がドキドキした。ささやななえさんが漫画にしてくれたおかげで伝わりやすくなったと思う。椎名篤子さんも、その影響力に期待し、「新 凍りついた瞳」の方もささやななえさんに依頼したようだ。「新 凍りついた瞳」にも椎名篤子さんの原作があるようだ(「あとがき」より)。

 「凍りついた瞳」というタイトルは、虐待を受けた子が特徴的に示す「Frozen watchfulness 凍てついた凝視」からとったそうだ。表情を失った顔、無感動な目を表徴的に表現した言葉らしい(「あとがき」より)。文庫本の帯には次のように書いてある。

 フローズン・ウォッチフルネス(凍りついた瞳)
 それは、親に疎まれ、殴られ、傷ついた子ども達の絶望のまなざし――――
 子ども虐待防止のため闘い続ける人々を描く、渾身のドキュメンタリー

 裏表紙には次のように書いてある。

 親がわが子を傷つける。ことばで、暴力で、そして「無関心」で…。年々増え続ける子ども虐待の痛ましい事件、踏みにじられた子どもたちを救うため、全力で戦い続ける人々と、生き抜こうともがく幼い魂を描いた、渾身のドキュメンタリー。

 ぜひ読んで欲しい漫画である。

 漫画は5話で構成されている。

 第1話「SOS、SOS、助けて…」では、児童虐待が疑われてから住所を2度変えらて、自治体間の連携が課題になった事件である。救えるチャンスは何度もあったのに救えなかった事件。名前などを変えられフィクションになっているが、ニュースになった。現在は児童福祉法が改正されて連携強化が進められているらしい。

 第2話「サウナの家」では、母親のネグレクトで乳児院に預けられ、一人の保育士との関係で愛着障礙が改善されてきた満2歳の時に「措置変更」で児童養護施設に移らなければいけなかった子が主人公。現在は児童福祉法の改正で乳児院で6歳まで暮らせるようになったらしい。
 児童養護施設で別の保育士に育てられるが、酔った父親の「強制引き取り」で行方不明になり、その間は父親に殴られながらサウナの休憩室で寝泊まりしていたらしい。
 再び、元の児童養護施設で育てられるが、少年の傷は深く、それでも少年も保育士たちも頑張って、アパートで暮らして臨床心理士を目指すようになるまでが描かれている。少年の気持ちが伝わってきて泣いた。
 若かった保育士の女性も最後に登場するシーンでは皺が描かれるなど年月を感じさせる。

 第3話「長い家路」は「自立援助ホーム」で暮らす少女が主人公。少女は生後6か月で乳児院に措置入所し、満2歳の誕生日に措置変更で児童養護施設に移り、成績優秀で問題なく育っていたが、中学2年の時に本人の希望で施設措置が解除される。しかし、半月後に車で30分もかかる道を歩いて児童養護施設まで一人で帰ってくる。しかし、その時に家に帰され、非行がエスカレートして親が児童相談所に相談して「自立援助ホーム」に委託されることになる。前編の終わりに彼女が深夜に歩いて児童養護施設に帰ってきた理由が明かされて、それを聞いて泣いた。
 後編ではホームで暮らす別の少年の話が加わり、ホームから出た後のことも描かれる。ホームから出た後もホームが故郷として重要であることが描かれている。

 第4話「母子治療」は児童精神科医の治療を受けている母娘が主人公。少女が高校3年生になるまでの母親をはじめとして兄2人、父親の家族の変化が描かれている。最初は分からなかったことが途中で分かって、ちょっとだけミステリー。謎が解けてからの家族の再生が感動的。

 第5話「ふたりの法医学者」は先進的なアメリカをモデルに児童虐待の早期発見のために活躍している二人の法医学者を紹介。

 このシリーズは「凍りついた瞳」「続・凍りついた瞳」「新 凍りついた瞳」の全てを読んでほしい。児童虐待がどのようなものか知らない人は、まずは「凍りついた瞳」を読んでほしい。「児童虐待の防止等に関する法律」が成立する前なので、関係機関の対応は古いが、児童虐待が甘いものではないことが分かる。もしかしたら身近に虐待されている子がいるかもしれない。

 約330ページ。読むのに3時間以上かかった。

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陽のあたる家~生活保護に支えられて~ [本]

陽のあたる家~生活保護に支えられて~ (書籍扱いコミックス)

陽のあたる家~生活保護に支えられて~ (書籍扱いコミックス)

  • 作者: さいき まこ
  • 出版社/メーカー: 秋田書店
  • 発売日: 2013/12/16
  • メディア: コミック

 表紙に「マンガでわかる生活保護」と書いてあるように、生活保護制度の概要や生活保護で暮らしている人の思いを知るには良い本だと思った。
 この漫画で制度の全てを知ることはできないが、詳細は利用しながら知れば良い。とりあえず、最低限知っておいた方が良いことは知れるような気がする。
 でも、この本を読んで一番知ってほしいのは生活保護で生活している人の気持ち。世間の冷たい目に晒されている彼らの気持ち。この本には受給者をバッシングする人など、こんな人にはなりたくないなぁと思うような人がたくさん登場する。彼らに苦しめられる主人公の家族を見ると、この漫画には救いが無いなぁと思った。最後の最後に救いのようなものはあるのだけど、世間はそんなに甘くはない。
 この本は誰に読んでほしいかを考えた。生活保護を受給した方が良いくらい困窮している人だろうか?でも、この本を読んだら受給した後の辛さが描かれていて需給を躊躇いそう。それ以前に申請時に窓口で酷いことを言われることが分かるわけだから、それだけでも申請することを躊躇いそう。生活保護受給者をバッシングしている人が読んだらどうだろう?自分の分身が多数登場するので、その登場人物を見て自分を醜いと思ってバッシングしなくなれば良いのだが、甘いかもしれない。

 この漫画の主人公たちは誰が見ても困っている人たち。彼らをバッシングする登場人物は彼らの事情を知らないからバッシングしている。知っていればバッシングしないかもしれない。では、主人公たちほど困ってない人に対してはどうだろう?「主人公たちは生活保護を受給してもいいよ。でもね…」となりそうな気がする。
 この問題を改善するのは非常に難しい。
 漫画のラストは主人公の、作者の希望の言葉で締めくくられる。

 約160ページ。全部読むのに1時間かからなかった。

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タグ:さいきまこ

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さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 [本]

さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 (バンチコミックス)

さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 (バンチコミックス)

  • 作者: 吉本 浩二
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/03/09
  • メディア: コミック

 裏表紙に次のように書いてある。

 3.11…岩手県沿岸部を走る三陸鉄道では、線路の多くを被災。ガレキの山の中、「さんてつマン」たちは、それでも前を向き、震災わずか5日で一部再開を果たしたのだった。綿密な取材を元に描く震災ドキュメンタリー漫画の決定版!!

 初版は2012年3月15日。初版の直後に読めば感動したのかもしれないが、今日初めて読んだ時は残念ながら感動できなかった。感動的な話は描かれている。でも、構成が「取材日記」のような形で、インタビューの様子が描かれていて、私が期待していたのは、作者が登場せず、ただ「さんてつマン」とその周辺の人たちが登場する復旧のストーリーだったから、期待外れになってしまった。
 三陸鉄道の復旧の話はNHKもドキュメンタリーで放送した。その時は感動したのだが…。

 漫画にはさんてつ復旧以外の話も盛り込まれていた。その話もNHKのドキュメンタリーで取り上げられていて、その時は感動したし、生の証言を聞けば今でも感動できるような気がする。

 やはり、取材日記のような構成ではなく、取材を元に当時起こったことを再構成して漫画にした方が感動したかもしれない。ドラマや映画の台本になるような感じで…。
 でも、当時何が起こったかの記録としては意義があると思う。

 読むのに約1時間。


タグ:吉本浩二

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