SSブログ

新凍りついた瞳 [本]

新凍りついた瞳 (集英社文庫 さ 22-3)

新凍りついた瞳 (集英社文庫 さ 22-3)

  • 作者: ささや ななえ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: 文庫

 文庫版の初版は2012年10月23日で、文庫版用のあとがきとしてささやななえさんの「あとがきにかえて」と椎名篤子さんの「傷ついた子どもの成長のために」が載っている。そして、文庫版になる前のコミックの椎名篤子さんの「あとがき」もある。それが2003年9月である。その「あとがき」に次のように書いてある。

 続編である本書「新 凍りついた瞳」では、他の作品に比べて、法律や子ども虐待に関係する事象の説明が多い。実はこれには理由がある。この漫画が「児童虐待の防止に関する法律」の法律改正に向けて、いくつかの願いを込めて制作されたものだからである。

 載っている作品の発出を見ると2002年から2003年。そして2004年に「児童虐待の防止等に関する法律」は改正された。関連する法律も改正され、文庫本には枠外に2004年に児童福祉法が改正されたことが記載されている。すなわち、文庫本に描かれているのはその前の問題点である。残念ながら、法改正後も児童虐待で亡くなる子が後を絶たないが…。

 最初の作品「凍りついた瞳」の原作は椎名篤子さんの「親になるほど難しいことはない」で、これを読んだささやななえさんが『心臓のドキドキが止まらなく』なり『「これを描けってこと?」と気づいた』そうだ(「あとがきにかえて」より)。私は原作本は読んでないが「凍りついた瞳」を読んだ時に心臓がドキドキした。ささやななえさんが漫画にしてくれたおかげで伝わりやすくなったと思う。椎名篤子さんも、その影響力に期待し、「新 凍りついた瞳」の方もささやななえさんに依頼したようだ。「新 凍りついた瞳」にも椎名篤子さんの原作があるようだ(「あとがき」より)。

 「凍りついた瞳」というタイトルは、虐待を受けた子が特徴的に示す「Frozen watchfulness 凍てついた凝視」からとったそうだ。表情を失った顔、無感動な目を表徴的に表現した言葉らしい(「あとがき」より)。文庫本の帯には次のように書いてある。

 フローズン・ウォッチフルネス(凍りついた瞳)
 それは、親に疎まれ、殴られ、傷ついた子ども達の絶望のまなざし――――
 子ども虐待防止のため闘い続ける人々を描く、渾身のドキュメンタリー

 裏表紙には次のように書いてある。

 親がわが子を傷つける。ことばで、暴力で、そして「無関心」で…。年々増え続ける子ども虐待の痛ましい事件、踏みにじられた子どもたちを救うため、全力で戦い続ける人々と、生き抜こうともがく幼い魂を描いた、渾身のドキュメンタリー。

 ぜひ読んで欲しい漫画である。

 漫画は5話で構成されている。

 第1話「SOS、SOS、助けて…」では、児童虐待が疑われてから住所を2度変えらて、自治体間の連携が課題になった事件である。救えるチャンスは何度もあったのに救えなかった事件。名前などを変えられフィクションになっているが、ニュースになった。現在は児童福祉法が改正されて連携強化が進められているらしい。

 第2話「サウナの家」では、母親のネグレクトで乳児院に預けられ、一人の保育士との関係で愛着障礙が改善されてきた満2歳の時に「措置変更」で児童養護施設に移らなければいけなかった子が主人公。現在は児童福祉法の改正で乳児院で6歳まで暮らせるようになったらしい。
 児童養護施設で別の保育士に育てられるが、酔った父親の「強制引き取り」で行方不明になり、その間は父親に殴られながらサウナの休憩室で寝泊まりしていたらしい。
 再び、元の児童養護施設で育てられるが、少年の傷は深く、それでも少年も保育士たちも頑張って、アパートで暮らして臨床心理士を目指すようになるまでが描かれている。少年の気持ちが伝わってきて泣いた。
 若かった保育士の女性も最後に登場するシーンでは皺が描かれるなど年月を感じさせる。

 第3話「長い家路」は「自立援助ホーム」で暮らす少女が主人公。少女は生後6か月で乳児院に措置入所し、満2歳の誕生日に措置変更で児童養護施設に移り、成績優秀で問題なく育っていたが、中学2年の時に本人の希望で施設措置が解除される。しかし、半月後に車で30分もかかる道を歩いて児童養護施設まで一人で帰ってくる。しかし、その時に家に帰され、非行がエスカレートして親が児童相談所に相談して「自立援助ホーム」に委託されることになる。前編の終わりに彼女が深夜に歩いて児童養護施設に帰ってきた理由が明かされて、それを聞いて泣いた。
 後編ではホームで暮らす別の少年の話が加わり、ホームから出た後のことも描かれる。ホームから出た後もホームが故郷として重要であることが描かれている。

 第4話「母子治療」は児童精神科医の治療を受けている母娘が主人公。少女が高校3年生になるまでの母親をはじめとして兄2人、父親の家族の変化が描かれている。最初は分からなかったことが途中で分かって、ちょっとだけミステリー。謎が解けてからの家族の再生が感動的。

 第5話「ふたりの法医学者」は先進的なアメリカをモデルに児童虐待の早期発見のために活躍している二人の法医学者を紹介。

 このシリーズは「凍りついた瞳」「続・凍りついた瞳」「新 凍りついた瞳」の全てを読んでほしい。児童虐待がどのようなものか知らない人は、まずは「凍りついた瞳」を読んでほしい。「児童虐待の防止等に関する法律」が成立する前なので、関係機関の対応は古いが、児童虐待が甘いものではないことが分かる。もしかしたら身近に虐待されている子がいるかもしれない。

 約330ページ。読むのに3時間以上かかった。


「凍りついた瞳」シリーズ

凍りついた瞳 (YOU漫画文庫) 続・凍りついた瞳 (YOU漫画文庫) 新凍りついた瞳 (集英社文庫 さ 22-3) 凍りついた瞳(め)―子ども虐待ドキュメンタリー 凍りついた瞳(め)―子ども虐待ドキュメンタリー (続) 新凍りついた瞳(め)―子ども虐待ドキュメンタリー 新 凍りついた瞳―「子ども虐待」のない未来への挑戦 (集英社文庫) 凍りついた瞳が見つめるもの―被虐待児からのメッセージ (集英社文庫) 凍りついた瞳が見つめるもの―被虐待児からのメッセージ 凍りついた瞳(め) 文庫版 コミック 1-3巻セット (集英社文庫) 凍りついた瞳(め) コミック 1-3巻セット (愛蔵版コミックス) 親になるほど難しいことはない―「子ども虐待」の真実 (集英社文庫)

共通テーマ:コミック

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。