寒水魚:時刻表 [CD]
1.悪女/2.傾斜/3.鳥になって/4.捨てるほどの愛でいいから/5.B.G.M./6.家出/7.時刻表/8.砂の船/9.歌姫/
「時刻表」は都会で暮らす青年の孤独を歌っているのだと思うが、その歌詞には考えさせられた。
きのう午後9時30分に そこの交差点を渡ってた
男のアリバイを証明できるかい
あんなに目立ってた酔っ払い 誰も顔は思い浮かばない
ただ そいつが迷惑だったことだけしか
(「時刻表」中島みゆき)
その通りだろう。淋しい現実である。その後に続く『たずね人の写真のポスターが 雨に打たれてゆれている』でその淋しさが強調される。そのポスターは剥がれかけた古いもので「尋ね人」はまだ見つかっていないだろう。そして、上に引用した歌詞のような街ではポスターを貼っても無駄で、これからも「尋ね人」は見つからないだろう。
誰が悪いのかを言いあてて どうすればいいかを書き立てて
評論家やカウンセラーは米を買う
迷える小羊は彼らほど賢い者はいないと思う
あとをついてさえ行けば 何とかなると思う
見えることとそれができることは 別ものだよと米を買う
(「時刻表」中島みゆき)
そんな感じである。『米を買う』とは「金を稼いでいる」ということ。この歌詞の青年はテレビを見ながら、あるいは本屋に積まれた本を見ながら、「偉そうにしやがって。分かったようなことを言いやがって。お前らに何が分かるっていうんだ」と思っているかもしれない。たぶん心を許せる友人もいないので、思うだけで口に出さない。口に出しても小さく呟くだけだろう。
街を歩く青年の顔に笑顔はない。
人の流れの中で そっと時刻表を見上げる
(「時刻表」中島みゆき)
彼の目から涙が零れそうである。
寒水魚:【傾斜】【捨てるほどの愛でいいから】【時刻表】【砂の船】【歌姫】
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