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ユダの福音書 [本]

ユダの福音書 DVDブック ビジュアル保存版

ユダの福音書 DVDブック ビジュアル保存版

  • 作者: マービン マイヤー, グレゴール ウルスト, ロドルフ カッセル, アンドリュー コックバーン
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2006/07/07
  • メディア: 単行本

 キリスト教では「裏切り者」とされているイスカリオテのユダ。しかし、私はいつの頃からかユダを「裏切り者」と思わなくなった。たぶん遠藤周作さんの「イエスの生涯」を読んでからだろう。遠藤周作さんはユダの人柄について詳しく描いている。それを読んだらユダを憎めなくなる。遠藤周作さんの解釈は一つの解釈に過ぎなくて正しいという証拠はない。でも私の心に訴えかけてくるものがあった。そして、いつの頃かユダはイエスの指示でイエスを裏切ったのだという説を聞いた。自分を殺させるような行為である。驚いたが、イエスが預言通りに行動していることを知りイエスは死ななくてはならなかったことを知った。死に方も定められていたように思う。その通りに死ぬにはどうしたら良いか。ユダに裏切ってもらう必要があった。イエスの指示でユダが裏切ったという説に納得がいった。予言は実現するもの。そう思っている。そしてイエスは予言を含む預言を実現するために行動していた。私はイエスの行動をそのように解釈している。
 そのような思いで長く過ごしてきて、つい最近、偶然に「ユダの福音書」というものがあることを知った。発売前だった「ビジュアル保存版」を予約した。DVD付き、「ユダの福音書」全文つき。これまでに発売されていた「ユダの福音書を追え」「原典 ユダの福音書」DVD「ユダの福音書」の全てを含んでいてお買得ではないかと思って予約した。「ユダの福音書を追え」は含まれていなかったようだがDVDで「ユダの福音書」が発見されてから解読されるまでの経緯が再現ドラマ付きで詳しく解説されていてそれで十分だった。またDVDにはユダの福音書の一部も再現していた。本を読んでからDVDを見たのだが、本を読むよりも理解しやすかった。ただユダの福音書の文言の解釈で少し違和感があった。
 例えばイエスがユダに裏切りを支持したと解釈されている文章「お前は真の私を包むこの肉体を犠牲とし、すべての弟子たちを超える存在になるだろう。」は、日本語訳のせいだろうか、文字どおりに解釈すれば「命令」ではなく「予言」である。「お前は東京に行くだろう」と言われて「お前は東京へ行け」と普通は解釈しない。日本だと上司が「外の空気を吸いたいなぁ」と言ったら部下は「窓を開けろ」という命令だと解釈する必要があるが、そんな感じかもしれない。あるいはユダはイエスが預言通りに行動していることを知っていたからイエスの予言を聞いて自分の役割を理解したのかもしれない。とにかく文字通りでは「命令」と考えることはできなかった。
 それから秘密の啓示をユダにだけ語ったというのは序文を読むとそうなのかもしれないと思うが、また弟子たちがイエスの言葉に腹を立てた後に腹を立てなかったユダに「ほかの者から離れなさい。そうすれば、王国の秘密を授けよう」と語っていることからもユダにだけ秘密の啓示を授けたと考えることができるが、ユダが他の弟子から離れるシーンがないままイエスはユダの質問に答え、ユダに秘密の啓示を語りはじめる。ただ弟子たちの前でだと思われるユダの質問に答えた後、「こう言うと、イエスは離れていった。」という記述がある。その後に再びユダがイエスに質問している。一人だけイエスを追いかけていって質問したのかもしれない。それならばユダにだけ秘密の啓示を語ったとする解釈に納得がいくような気もする。その後に本の方では「イエス、邪悪なものの滅亡をユダやほかの者たちと話し合う」という著者による見出しが付け加えられているが、ユダの福音書にはユダに対するイエスの言葉の中に「あなたがた」と複数形が含まれているが他の弟子たちの所に戻るシーンがなく他の弟子たちの言葉もなくユダの質問だけなので、見出しのように「ほかの者たち」とは話し合っていないような気がする。まだユダと二人だけだろう。その後にユダは裏切りの指示を受け「明るく輝く雲」の中に入っていくが、弟子たちの前ではないだろう。
 ところで、ユダがイエスを裏切ることによって金を受け取ったのは、もしかしたら弟子たちの生活費が底をついていたからかもしれない。ユダは会計係だったので、生活費の不足をイエスに相談し、イエスが自分を裏切ることで金を受け取り弟子たちの生活費にするように指示したのかもしれない。これは何の根拠もなく、イエスの情報を知りたかった律法学者たちとの契約の形で自然に金を受け取っただけかもしれないが。

 私は「ビジュアル保存版」(税込み3,990円)を買ったが、DVD(税込み2,980円)だけでも見る価値があるような気がする。確認のために「原典 ユダの福音書」(税込み1,890円)を買うと「ビジュアル保存版」(税込み3,990円)よりも高くなるが…。


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コメント 4

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木魚の洞

はじめまして
私もイタリアなど旅行前にいいろいろキリスト教関係の本を富みましたが
遠藤周作さんの本が結局一番キリスト教徒でないものにわかりやすい著作であった気がします
ユダの福音書は存在し手もおかしくないと思いますし非常に興味があります
by 木魚の洞 (2006-07-16 20:04) 

いしい

遠藤周作さんはカトリック教徒らしいのに「イエスの生涯」という作品を書けるのだからすごいです。
ユダの福音書はマルコによる福音書など正統派の福音書よりも後に書かれたものらしく当時はたくさんの福音書があったようです。その中でもユダの福音書は正統派に一番嫌われたらしいです。それからDVDによると正統派の福音書の「裏切り者ユダ」像が反ユダヤ主義に利用されたらしいです。正統派福音書のなかで一番後に書かれたヨハネによる福音書が一番ユダのことを悪く書いていたとか、いろいろなことを知れて面白かったです。(^_^)
by いしい (2006-07-17 00:16) 

木魚の洞

確認して送信したつもりなのですが・・・
誤字多く大変失礼しました
by 木魚の洞 (2006-07-17 19:28) 

いしい

私の方は誤字は全然気にしていません。私は誤字が多いから。(^_^;)
コメントって誤字を修正できないんですよね。仕方ないです。
by いしい (2006-07-18 09:41) 

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