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進化しすぎた脳 [本]

進化しすぎた脳  中高生と語る「大脳生理学」の最前線

進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線

  • 作者: 池谷 裕二
  • 出版社/メーカー: 朝日出版社
  • 発売日: 2004/10/23
  • メディア: 単行本

 本のタイトルである「進化しすぎた脳」とはどういうことか。それは第1章で述べられている。人間の脳は非常に優れた能力を持っているはずである。しかし身体がこの程度なので脳もこの程度の能力しか発揮していないというのである。その証拠として水頭症で大脳の体積が正常な人の10分の1しかないのに脳の機能が全く正常だった人の例が紹介されている。その人は大人になってたまたま検査を受けて、そのときに初めて水頭症であることを知ったらしい。それまでは他の人と全く違わない生活を送っていたのだろう。著者は人間の脳のことを「宝の持ち腐れ」と表現している。ただ、大人になってから脳を削ると障害が生じる。すなわち大人の脳は余っているわけではない。全てをちゃんと使っている。人間は自分の脳を無駄遣いしているのかもしれない。身体の進化に応じた脳であれば無駄遣いする余裕はなかっただろうが、身体以上に進化してしまったので無駄遣いしているのかもしれない。本では人間以上に進化しすぎた脳としてイルカの脳も紹介されている。イルカの脳は人間よりも能力を持っているのに、人間よりも単純な身体を持っているから「人間よりも賢い」と言われるまでには至らなかった。もったいない。
 身体をコントロールしている脳であるが、その脳は身体に応じて作られている。当たり前のことかもしれないが、これはとても重要なことである。人間が環境に合わせて身体を進化されるのではなく身体に合わせて環境を進化させていることと合わせて、人間社会に関して深く考える基礎になるような気がする。

 さて、この本はとても面白いし読みやすい。高校生に対する講議の記録で、その講議が上手だったからだろう。脳に関する知識をできるだけたくさん得ようと思ったら、この本では物足りないかもしれない。しかし、知的好奇心が刺激されて、脳についてもっと知りたくなるかもしれない。お勧めの本である。

 一部を引用する(142ページ)。

 だから、いまこうやって世の中がきみらの前に存在しているでしょ。ぼくがしゃべったことを聞いて理解しているでしょ。自分がまさに〈いま〉に生きているような気がするじゃない? だけど、それはウソで、〈いま〉と感じている瞬間は0.5秒前の世界なんだ。つまり、人間は常に過去に生きていることになるんだ。人生、後ろ向きなんだね(笑)。

 どういうことかは本を読んでほしい。


タグ:池谷裕二
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